人に役立つピロリ菌

最近の噂 によると、Economist誌の The twists and turns of fate つう記事で、胃癌の原因になるピロリ菌が実はアレルギーや肥満を防いで人体に有益な効果ももたらしているっつう説が紹介されてるらしい。ので、ちょっとだけ調べてみた。
この説を唱えてるのは New York University School of Medicine の Martin Blaser 教授。Wikipedia にも記事があって、この記事さえ読めばとりあえず軽くわかった気になれるのでお勧め。ほんとはもっとちゃんとした文献読んだ方がいいと思うけど。
その Wikipedia によると、Blaster 教授は1989年にピロリ菌から cagA タンパク質を分離して胃癌発生メカニズムの解明に大きく貢献したのだけど、その後1996年頃から「ピロリ菌って実は人体に有益なのでは」仮説を唱えて、その道まっしぐらに研究を続けてきたらしい。
教授の仮説によると、昔の人類はみんなピロリ菌に感染してた。ところが20世紀後半になって抗生物質が普及してくると、他の病気になったときに処方される抗生物質のせいで、ピロリ菌も一緒に死んでしまうようになった(自然除菌)。そのため胃癌は減ったが、それまでピロリ菌の cagA+ タンパク質によって抑えられていた別の病気が多発するようになった。それは主に、アレルギーと肥満と逆流性食道炎だ。とのこと。
うーむ、ほんまかいな、なんとも怪しいが。しかし最近ぽっと出てきた新説と言うわけではなく、10年以上前から仮説として唱えられてて、当初は医学界でも懐疑的だったけど徐々に賛成する人も現われ始めてる、つう感じらしい。まあ今後の研究ではっきりさせてもらいたいわな。ちなみに私個人のケースを報告すると、ピロリ菌陰性で(先日人間ドックで検査した)、見事に逆流性食道炎があるよ。子供の頃から抗生物質漬けだったかんな。ただしアレルギーはほぼ無いし、肥満もしてない部類だと思う。
でももしこの仮説が本当だとしたら、逆に cagA+ タンパク質を使ってアレルギーの症状を抑えるっていう治療法も考えられるんでないかい。つまり胃からはピロリ菌を除菌して胃癌を予防しつつ、適量の cagA+ を皮下注射してアレルギーを抑える、とかなんかそんな感じで。
まあ実際にはピロリ菌だけじゃなくいろんな細菌が一緒に影響してるんじゃないかっつう気もするがな。教授は「ピロリ菌がいるかいないか」だけに目をつけてるけど、ピロリ菌がいないってことは他の細菌も一緒に除菌されてると思われ、ピロリ菌だけじゃなくその辺がみんな総合してアレルギーとかを引き起こしてる、ってのが割とありがち。だとすると、ピロリ菌だけ戻すとかcagA+だけ注射するとかしても、原因の一部しか解決しないから、僅かに改善するだけ、とか。胃癌にしろアレルギーにしろ「これが単一の原因だ」と言い切るのはなかなか難しいと思われる。