シュレーディンガーの子猫

ええええ? シュレーディンガーってアインシュタインと同盟組んで量子力学の確率解釈に頑強に抵抗し、決定論にしがみついてた人でしょ?

戦間期のウィーン (池田信夫)
シェーンベルクシュレーディンガーハイエクに共通するのは、世界は決定可能で科学的にコントロールできるという啓蒙的な合理主義の否定だった。

シュレーディンガーの猫だってもともと「ノイマン/ウィグナー解釈に従うとこんな変なことになる→だから確率解釈を前提とする量子力学には深刻な欠陥がある」という背理法として提出されたものでしょ? そして世界に不確定性がもたらされた は未読なんだけど、そう書いてない? amazon のレビュー見るとこんなこと書いてあるんだけど…

温故知新
"波動" を根源的なものと解釈したシュレーディンガーは、「ボルンが提示した波動の確率解釈」を拒否し、「粒子は根底にある波動の現われ」であるとして、何と何と決定論に組していた・・・

この辺、特にシュレーディンガーの猫のあたりとか、量子力学に詳しいつもりの人でも誤解してる人多いよね。なぜそういう人が多いのかについては 科学者が歴史的事実を軽視する理由 つう面白いエッセイがある。余談だけど、こういう「原論文に自分で目を通すことなく語ろうとする」って話は、科学者だけでなくネット住人にも共通する性質のような気がしてる。たぶん共通する何かがあるんぢゃろう。私自身、こうやってしたり顔で語ってるけど、シュレーディンガーの「量子力学の現状」は読んでないもんな。
シュレーディンガーの功績と言えばシュレーディンガー方程式だけど、これはド・ブロイの物質波の概念を素直に発展させたものと見るべき(ちなみにド・ブロイも確率解釈には抵抗してボーム解釈みたいな変なのを提唱してる)。ド・ブロイの論文はほとんどの物理学者に顧みられなかったんだけど、これに目をつけたシュレーディンガーは慧眼だった、ってことだろか。つまり、シュレディンガー波動力学を「発明」したんじゃなくて、「イノベーション」したと見るべき。池田先生の大好きなイノベーションぢゃよー。
ところで、シェーンベルクシュレーディンガーハイエクの共通点だけど、ハイエクを除く二人はユダヤ系だっつう共通点の方が大きいんじゃないかい。これだとフロイトも一緒くたにできる。真面目な話、ハイエクだけかなり毛色が違うと思うんだよな。いやもちろん、ハイエク大好きな池田先生が「ハイエクの思想ってこんなに一般性あるんだぜ」と言いたいがために他の二人と無理やり結びつける上記のレトリックを展開したんだって意図はちゃーんと理解してるから心配しなくてもだ・い・じょ・う・ぶ (はーと)。
おまけ。「シュレーディンガーの子猫」ていうタイトルの意味ですが、ジョージ・アレック・エフィンジャーの書いた同名の短編SFと、さらにシュレーディンガーに幼児性愛趣味があったっつう故事に基づいてつけたものです。エフィンジャーのSFって小さな女の子がレイプされちゃうかどうかでパラレルワールドが分岐するんだけど、それってひょっとしてシュレーディンガーの幼児性愛趣味を踏まえてのもんだったんだろか? シュレーディンガーも生まれた時代が100年遅かったら不遇な人生を歩んでおったろうと思うんぢゃよね。