年寄りが語る戦後日本

なんか Tumblr でこの話が出回ってるみたいなので、年寄りがこれ読んで思ったことを書いてみるよ。

raurublock on Tumblr
日本軍は太平洋戦争で予想以上に手ごわかった。アメリカの政策として「金持ちを作らない/天才を作らない/エリートを作らない」三拍子を掲げ「日本の教育を変えて、今後は天才が出ないようにします」スローガンで作られた。
製作者には「洗脳研究の最高権威」「スタンフォード催眠研究所の創立者」である、ビルガードと言う人物が関わった。そのプログラムの要点は?

  • 白人に対する徹底的な劣等感を植え付けること。
  • アメリカは素晴らしい国だと信じ込ませる事。
  • 自分独自の意見を作らせない事。
  • 討論、議論を学ばせない事。
  • 受身のパーソナリティーを作る事。
  • 一生懸命勤勉に仕事させる事。
  • 目立つ人の足を引っ張る事。

これはイギリスの植民地だったインドで実践された教育方針のままだそうだ。

この話の信憑性については私では何ともわからないんですが、仮に本当だったとして、1980年代の日本がイケイケだった時期にはこういう話はほとんど語られず、だめだめになった今になってまことしやかに語られるってのは、どうなんぢゃろね。もし本当なら、高度成長期を支えた団塊の世代もこのプログラムで教育されてたってことになるんだろうし。三菱地所がロックフェラービルを買収した頃のアメリカ人は「アメリカも日本の教育を真似しないとヤバいぞ」とか真剣に言ってたんだけど。まあ「アメリカ人はバカだから」でQ.E.D.かもしれんがな。
真面目な話、高度成長期の終わり頃に生まれ、自分の国がオイルショックや公害問題を乗り越えてバブル絶頂期に至る過程をリアルタイムで見てる私としては、第二次大戦後の40年間って本当に奇跡の復興と言う他ないような、日本の長い歴史の中でも一番日本人が素晴らしかった時期、という認識でいるんですよ。明治維新よりも戦後復興の方が上。
個人的な話をしますと、私が幼稚園児の頃って、実家のテレビも白黒で、映るチャンネル数も少なく、謎の円盤UFOを見るために隣の家までテレビを見せてもらいに行ってた状態だった。もっと前の母親の日記を読むと、「給料日前はお米も無く、子供達がお腹を空かせて泣いている、自分も泣きたくなる」みたいな赤貧話が出てくる。三十数年前の話。それが次第に両親の収入も増え(当然共稼ぎ)、それには父親が5年ぐらい単身赴任してたり母親がメニエル氏病で片耳難聴になったりとかいろんなこともあったけど、まあともかく子供二人を東京の大学に行かせられるぐらいになった。そういう自分の生い立ちが、日本の70〜80年代の経済成長とリアルに重なるわけです。だから「素晴らしい」って実感があるんだろな。「50年代は良かった」と言う人は多いけど、私にとってみると「70〜80年代こそ素晴らしかった」と感じられる。
んで、80年代以降に生まれた人にはそういう実感が無いってのもわかります。そういう人にとって日本は、ほとんど下り坂な一方だったと認識されてるんだと思う。成功体験が無い。
もちろんそれは一面では利点であって、てのも年寄りは成功体験を持ってるからこそ変革に踏み切れない。ローマ人の物語II塩野七生が言ってるとおり、「年齢が頑固にするのではない、成功が頑固にする」なんですな。変革の担い手になるのは成功体験を持たない若い人なんでしょう。ただ今の日本を見ると、成功体験の無さが若い人にとって悪い方向に働いてるって気はするなあ。
私とかよく「だから日本人はダメだ」とかくそみそにけなしたりもするけど、心の底には「とは言っても日本人なんだから最終的にはうまくやってのけるぜ」みたいな自信があります。やっぱり塩野七生ローマ人への20の質問の中でこんなこと言ってます。「ローマ人は文化的にはギリシャ人に征服された」という言葉は実はローマ人の自分自身への自信のあらわれだ、と。同じように私は、「日本人は文化的にはアメリカ人に征服された」と言われても、塩野七生の描くローマ人みたいに「いやあ、ホント」とか笑い飛ばせる。でもそれは、戦後日本の成功の歴史を我が身で体験してきたからこそできることなのかもしれん。日本というものに自信が無かったら笑い飛ばせるわけが無いわな。
でも、これからの日本の進路を考える上では、日本人の大半がそういう成功体験を持ってない、自信の無い日本人なんだ、ってことを前提で考えなきゃいかんのかもしれんなあ。上のやつの reblog が流行るのとかってまさにそうだよなあ。ってなことを思いました。まる。