北京故宮書の名宝展

北京故宮書の名宝展 が今日までだったので、江戸東京博物館まで行ってきました。だって王羲之の蘭亭序(の写本)が来てるんだぜ? 凄くない?
公式サイトには「午前中が大変混み合います、15時以降のご観覧をおすすめします」とか書いてあって何故?と疑問だったんですが、チケット売り場の列を見て合点がいった。平均年齢がたぶん60歳オーバーなんすよ。それでか。まあ、美術館まで書を見に来る人なんてやっぱ年寄り主体てのは致し方ないことかのう。
目玉は蘭亭序ですが、それ以外にも西晋から清までのいろんな書が展示されてて、結構な点数ありました。入り口あたりが混んでて、案内の人(これも年寄り)が「入り口付近が混雑してるので、先に掛け軸の方を見て、余力があったら最初に戻って見ることをお勧めします」とか言ってて、なんつう乱暴な案内ぢゃと思ったけど、素直にその案内に従って、明以降の掛け軸だけ見たら、それで疲れてしまって、元以前のはパスしてしもうた。やっぱ玄人の助言には従うべきだな。清代に書かれたやたらポップな篆書とか面白かった(王羲之を表面上真似るだけの流行に反抗して、古代の字形をそのまま伝える篆書を蘇らせることで王羲之の精神を継ぐことを目指したんだそうな)。
さて蘭亭序ですが、書道界では書聖として崇められる東晋王羲之が書いた詩の序文です。蘭亭という店で酒宴が開かれ、そこで王羲之の友人らが詩を披露して詩集を作り、その序文を王羲之が書いた。ところが酔いが醒めてから序文を見直してみると、やっぱり酒の席で書いたものだけあって、書き損じとかあったりして見苦しい。そこで清書として書き直してみたけど、どうしたことか、酔った勢いで書いた序文の美しさを超えるものがどうやってもできない。そういうわけで、書き損じ有りのバージョンが蘭亭序として有名になりました。酒の力は偉大だったと言うことか。
ところが時代は下って唐の太宗皇帝が死んだ時、この皇帝は王羲之の大ファンで、蘭亭序の本物を自分の墓に自分の死体と一緒に埋葬させてしまったんですね。なんと迷惑な。ただまあその前に何本も複製を作らせておいたので、ほぼ本物通りと言われる模写品が現存してます。その中でも最も有名と言われてるのが、今回やってきた八柱第三本。字のかすれ具合や書き直し跡まで原文を忠実に再現した、と言われてます。本当かどうかは誰も知らんわけだが。
でまあ蘭亭序の前は長蛇の列になっとって、やっぱ人気ぢゃのう。仕方ないか。ほんのちらっとだけしか見えませんでした。これを見ながらディジタル時代の本物と偽物との関係についてとかいろいろインスピレーションもあったのだけど、そのうち書きます。
あとついでに常設展も観て来ましたけど、これは 昔 id:s162 id:asha と一緒に行ったときの話 を既に書いてるのでパス。