対決 巨匠たちの日本美術

そういえば、少し前に 「対決 日本美術の巨匠」展 を見てきていたのだけど、レポート書いてなかった。上野の国立博物館でやってるアレです。

総論としては「企画の勝利」ぢゃよねえ。美術館てのは単に美術品を展示すればいいってわけじゃなくて客の興味を引くような企画力が必要だ、てのが ギャラリーフェイクで繰り返し語られてた話ですけど、その成功例だな。「対決」という構図を作り出すことによって興味を引きつつ、二人の芸術家の違いを際立たせることで理解を深めようとする。ただ、12組もの対決を揃えようとした関係上、品数の少ない対決もあったりして、「一面だけを切り取った」という感もぬぐえなくもない。まあ一面だけだからわかりやすいとう利点と表裏一体だから仕方ないわな。
以下私の星取り表。7月29日から一部展示が入れ替えられてるらしいですが、その前の展示で採点してます。

運慶 vs 快慶

運慶の地蔵菩薩坐像 vs 快慶の地蔵菩薩立像の一発勝負です。どっちも重文だけどあんまりメジャーじゃない気はする。イントロ的位置づけかなあ。でも違いは良く現れてる。優美な快慶の方で。

雪舟 vs 雪村

これは楽しかった。雪舟4点 vs 雪村4点と物量も豊富でバラエティに富んだ対決。ベストマッチぢゃろう。雪村ってほとんど馴染みが無かったんだけど、水墨画にして楽しげなムードを醸し出す雪村の勝ちということで。

狩野永徳 vs 長谷川等伯

狩野派の戦い。襖絵と屏風なんだけど、3点ずつあった割には傾向が同じ感じなんでちょっと物足りない感も。違いは良く現れてた。私のジャッジは等伯

長次郎 vs 本阿弥光悦

余計なものをことごとくそぎ落とす長次郎 vs そこに無いものを求める光悦。長次郎のミニマルさにも挽かれるし、侘ってのは本来そういうもののようにも思うが、私の好みはクロームさに溢れた光悦か。そういやへうげものって長次郎の扱いが小さいよな。

俵屋宗達 vs 尾形光輪

8月11日からは風神雷神屏風(国宝のアレ)が来るんだよなー。なので行くなら11日以降にした方がよいやもしれませぬ。それが無い状態の評価だと、光輪に軍配を上げざるを得ない。

野々村仁清 vs 尾形乾山

陶芸対決。仁清ってあんまり知らないんですが、彩画陶とか良かった。しかしやっぱ絵皿の乾山かのう。

円空 vs 木喰

木彫仏対決。一個目の仏がいわゆる円空っぽくなくて「ええっ」と思ったけど、二個目からはちゃんと円空だったので安心した。微妙な勝負だが円空か。

池大雅 vs 与謝蕪村

この辺になるといまいちよくわからない。与謝蕪村が屏風画を描いてたてのも知らんかったぜよ。

伊藤若冲 vs 曽我蕭白

若冲って割と最近になって急に人気が出てきたような。ギャラリーフェイク銭湯のタイル絵の話を読んだときって私も含めて全然知ってる人いなかったもんな。蕭白の愉快な唐獅子図には心惹かれるが、やはり仙人掌群鶏の若冲か。

円山応挙 vs 永沢芦雪

この二人全然知らなかった… 幽霊画とか描いた人だと教えてもらいました。二人とも虎の絵がなんともあれです。虎の楽しさで芦雪か。

喜多川歌麿 vs 東洲斎写楽

メジャーどころ対決。これも6枚 vs 6枚と枚数が多く、しかも教科書や切手で馴染みのある版画が多いので(実際どれも重文らしい)、対決展のクライマックスと位置づけられましょう。写楽かのう。

富岡鉄斎 vs 横山大観

11本目まではあっさり決まったんだけど12本目は引き分けでもいいかな、などと思いつつ便宜的に大観を選んだ。快慶から始まって大観で終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、韻松亭を料亭として使う先駆けとなった人でもあるし、勝ちにする価値はあるのだろうけど(以下略)