アフター0 (岡崎二郎)

昨日のヒューリスティクスと差別のエントリを書いてて思い出したのが、アフター0ショートショート版に出てきた「あなたのナンバーはいくつ??」というエピソード。死んだ後に閻魔大王の前にやってきた男が天国に行くか地獄に行くか裁かれるという話です。絶版中のマンガだけど、一応ネタバレなんで畳みます。
この話における死後の裁きでは、「生前、3人以上を殺したことがあれば地獄行き、3人未満なら天国行き」という基準が適用されています*1
主人公は「俺は生前一人も殺してないから大丈夫だ」と安心するのですが、閻魔大王は「お前は3人分殺しているから地獄行きだ」と宣言します。実は、「体を壊しかけていた部下に残業を命じた」ことが後に部下が病死する原因の一つになったため「0.1人分の殺人」とか、そんな風に「直接死に至らしめなくても誰かが命を落とす要因を作った」ことも「殺人」とカウントされる、というのがこのショートショートのミソ。主人公の場合は、そういう1人未満の殺人が積み重なって3人分となり、それで地獄行きとなってしまったんですね。閻魔大王の宣告も、主人公を悪人として裁くと言うよりは、「すまんが3人から地獄行きと決まっておるのだ」と申し訳なさそうな感じ。
ラストシーンで、地獄に引き立てられていく主人公が「そんなんじゃ人殺ししてないやつなんていないじゃないか!」と叫ぶと、閻魔大王が「さよう、誰もが人を殺しておる」と答えます。確かにその通りだと思う。誰もが間接的に人殺しに関与している。なるだけそれを少なくする努力ってのは重要だけど。

*1:実は記憶に頼って書いてるので、ひょっとしたら4人だったかもしらん